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「迷った時、花屋の常識と反対の方法を選んでみる。
 それがいい結果につながることも多いんです。」

平川 善紀(ネルフラワー/フラワーアレンジメント)

訪れた店内には、そこかしこにオーナーの人柄が窺える。
カラフルなミニカー、ブリキのロボット、無骨なレトロ工具、
そして自身のルーツと語るアナログレコードの数々。
どこか友人の部屋を訪れたような、そんな心地よいフラワーアトリエ『nel flower』を営む
平川善紀さんはまっすぐほがらかで、「こだわりすぎない」こだわりの持ち主。
そして何より植物についてうれしそうに語るその姿は、
やっぱり昔からの友人のように気が置けない。

 高校を卒業後、製造業の会社に就職し、フリーターや古着屋店主を経て現在に至る。
花の世界に足を踏み入れたのは今から20年ほど前のことだ。
「たまたまアルバイトを募集していた花屋で働くことになったんです。
その時に出会った華道家・川瀬敏郎の本に感銘を受けて独学で生花の勉強を始めたのが、
この世界にのめり込むきっかけやったね」。

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 自身の店を開いたのは2010年、隣接する『nel hair design』と共に新たなスタートを切る。
「植物のある空間を提案することが僕の役割」と話すその店内も、
たくさんのグリーンと数々の雑貨やアイテムで溢れるが、
意外にも色鮮やかな生花は店舗の一画のみ。
「もちろん季節の花材や人気の品種も大切だけど、売れ筋だけを揃える店にしたくなかった」
と、週に2〜3回の買い付けでは、自身の琴線に触れるものを中心に、
常連客の好みに合わせたセレクトを怠らない。
その結果「多肉や観葉など鉢物が店のほとんどを占めてきて、
最近は店というより自宅にお客さんが訪ねて来てくれる感覚やね」と笑う。

 店頭での販売を中心に、フラワーアレンジ教室、
ギフトやブライダルフラワー制作など業務は多岐にわたる。
「結婚式や記念日に携わるということは、その人の人生に加担していくということ。
プレッシャーも大きいけれど、これほど貴重でうれしいことはないですね」。
最近は要望も多様化しているが、どんなオーダーに対しても
必ず「ネルフラワーらしさ」を加えることが信条だ。
「迷った時は、花屋の常識と反対の方法を選んでみる。
それが意外といい結果につながることも多いんです」。
異色の経歴を持つ平川さんだからこそ生み出せる多彩なアレンジは、
その言葉通り、人々の人生に花を添える。

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 「花をきれいでいさせてあげるのは大前提」と平川さんはいう。
「その花の持つ個性を見つけ出し、さらに魅力的に表現してあげるのが僕らの仕事なんです」。
切り出された花材はいずれ枯れていく。
その限られた時間をただ長らえるだけではなく、より魅力的な姿でいられるように、
そのための細やかな手入れや工夫は一切怠らない。
「花は手をかけた分だけ、ちゃんと応えてくれるから」。
花材の冷蔵保存を極力避けられるよう、品種によって水やり方法を細かく変える。
園芸用ナイフより薄くて鋭角な工作用のカッターを使用する。
これまでの経験に基づいた手法であってもそれはまだベストではない。
20年が経とうとしている今も尚、日々新たな発見がある。

 「植物って、決して特別な存在ではないんです」。
「ギフトだけではなく、もっともっと気軽に楽しんでほしい」という平川さんのそんな想いは、
少しずつ、そして確実に広がっている。
毎週1輪ずつ自分用の花を買いにくる男性。嫌なことがあった時は必ず店を訪れる女性。
参加者1名から始まったennのフラワーアレンジメントも、
今では20名を超えるワークショップとなった。
この春からは講師として、県内の高校で園芸科の生徒たちにフラワーアレンジを教えている。
「ひたむきに取り組むその姿と、つたないけれど満足げな表情がまたいいんよね」
そう笑う平川さんは、本当にうれしそうだ。

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 「もちろん自分なりのこだわりはあるけど、明日になったら全然変わることだってある」。
笑顔で話すその飾らない言葉は、日々自然体で植物と向き合い続ける平川さんらしい。
『植物と人との共生』が、決して特別ではないことを教えてくれる。
店の一画、いちばん高いところに飾られたレコード。
最も敬愛するオーティス・レディングは、その歌声で人種の壁を乗り越えた。
決してまっすぐではない道を歩んできた、まっすぐすぎる植物への想いはきっと、
世代も用途も性別も軽々と飛び越えて、これからも伝わっていく。

過去記事

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