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「培った技術や表現の、その限界を越えたい。
何事に対しても柔軟でありたいと思っています。」

苫米地 正樹(けむり陶房 苫屋/器)

 「物心がついた子供の頃から、なぜかターコイズブルーが好きだった」。
ただひとつの理由だけで、今もその「色」にこだわり続ける。
鮮やかな色彩と不規則な貫入の成す、偶然の組み合わせ。
真っ白なキャンバスのように、描くその器の形はとてもシンプルだ。
「人生を楽しむことが大前提」と話す、苫米地正樹さん。
彼がつくり出す器の数々は、軽やかで、遊び心に溢れていて、どこまでも自由だ。

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 高校在学中、陶芸の基礎知識を学ぶと共に、複数のコンテストで入選。
卒業後は萬古焼卸問屋の研究工房にて6年間勤務した後、
2003年、四日市市西阿倉川にて築窯。現在に至る。
ターコイズ好きが講じてネイティブアメリカンの文化や伝統にも造詣が深く、
彼の作品にはそこかしこにその影響が感じられる。
「自分らしく、何事に対しても常に柔軟でありたいと思っています」。
その言葉が示す通り、インディアンジュエリーやレザークラフトなど、
陶芸の制作行程において異色な技法を用いるのも、彼の作品の特徴だ。
工房を訪れると制作途中の器や数々の陶材と共に置かれた、「カチナドール」の姿も。
インディアン・ホピ族の信仰する精霊に見守られながら、苫米地さんは創作の日々を送る。

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 苫米地さんの器の特徴でもある、ターコイズブルー。
その鮮やかな色合いと共に目を引くのが、器の表面を満たす「貫入」だ。
器と釉薬との焼き縮みが起こる際、帳尻を合わせるためにできるヒビ。
この貫入をあえて印象的に残すことで、
実物のターコイズに見られる「マトリックス」を表現している。
マトリックスとは、元々は鉱物に含まれる不純物が表面化した模様で、
その表情は母岩の性質や環境によって異なるという。
貫入という偶然の生み出す表情だからこそ、本物のそれと見紛うものとなる。
「培ってきた技法や陶器で表現できるであろう、その限界を越えたい。
自分の持つ技術やアイディアの上に、偶然が重なる。計算できないことだからおもしろい」。

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 「嘘はつきたくない」と器に真っ直ぐ向き合うその人柄と、
「柔軟でありたい」と型や常識にとらわれない創作スタイル。
一見、正反対にも感じられるこの開窯当初からの2つの思いは、
今も変わらず苫米地さん自身、そして彼のつくる作品の中で響き続ける。
自然体で力まず、奔放で、つかみ所のない雲のような人。
固定概念にとらわれず、好きなものをとことん追求する。
自身のアイデンティティとも言える、ターコイズブルーに対しても
「好きな理由を知りたいと思ったこともあるけれど、今はもう“好き”なだけでいい」と笑う。
工房の片隅に置かれた、自作のバッファロースカル。
「自分の好きなもの」を見つめる少年のような無垢な横顔は、人生を謳歌する証だ。

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